恋愛の解体と北区の滅亡 29冊目

恋愛の解体と北区の滅亡

恋愛の解体と北区の滅亡

うわ、オシャレな不細工、俺の前座りやがった。

主人公の「僕」が仕事帰り、コンビニで自分より屈強な男に割り込まれたことから自尊心とか憎しみとか愛とか恋愛とかSとかMとかについて道すがら思考する話。でいいのか?道すがらってのがミソだとおもう。どっかのだれかが、「人間の思考速度は移動速度に比例する」とか言ってたと思うんだけど、とりとめのないことを思考するのに一番合う速度は、歩いているときだと思う。後電車に乗っているときも絶好調かな。
主人公はあれこれと脳汁だだ漏れなとりとめのないことを思考しつつ、靖国通りを新宿まで歩き、埼京線で大崎まで行ってそこから五反田へ。そこでSMクラブに行き、プレイ用のマンションの一室で女王様と北区が宇宙人の報復攻撃を受けるニュースを見て終わる。
そうそう、この物語では世界は宇宙人の襲来、といっても人間そっくりで中には眼鏡をかけているやつもいて正直がっかりな人々らしい、を受けており来年には世界は植民地化されるらしい。
世界は滅ぼされるんじゃないかという心配をする人々もいるなかで、主人公はそんなこと大して気にしておらずくだらないこと、でも自分にとっては重要なこと?をあれこれ思考しつつ最後はニュース見て終わるという、なんて言っていいのか分からないがでもよく分かる、不思議な小説。
帰宅途中歩いて駅に行って電車に乗ってまた歩いて、その間いろんなことをだらだらと考えるが特になにか結論が出るわけでもなく帰宅してしまえば飯食って風呂入ってネットするなりテレビ見るなして寝てしまうあの感じだと思う。
主人公の思考だだ漏れな感じは、ユヤたんこと佐藤友哉の小説が思い浮かんだが、本書は周りのこと(宇宙人の攻撃によって明日はないかもしれないのに)には無関心で自分の事にしか興味ないところが決定的に違うだろう。
後何故か阿部和重インディヴィジュアル・プロジェクションが思い浮かんだのだが、内容覚えてないしなんで思い浮かんだのか分からなかい。なんでかなぁ、と思いつつネットで色々と感想を漁っていると答えがあった。表紙だ。エロいのだ。

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)

インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)

高校生の頃、クラスで「作中にこの表紙の娘がでてくるのか?」「どうやら作中で犯されるらしい」とのデマが飛び交い大いに盛り上がったものだ。かくいう自分も騙された一人で、おかげさまでこの小説にいいイメージはなく、肝心の内容も「表紙の娘は関係ない」ということ意外覚えていない。
ああ、でもこの「恋愛の解体と北区の滅亡」の表紙の娘は同時に収録されている短編「ウンコに代わる次世代排泄物ファナモ」に出てくるのでご安心を。手に持っているものが「ファナモ」です。多分。この短編は26ページ程の超短編だがかなりの傑作。うますぎる。しかもオチがうはwwwwって感じで笑えるし、なにより最後に出てくる彼からの手紙が秀逸。立ち読みでも読める長さなので、こっちだけでも読むべし。読むべし。